2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

テロと逃走 (ミュンヘン / キャッチ=22)

1972年、ミュンヘンオリンピックでイスラエルの選手11人がパレスチナ武装組織《黒い九月》により人質にとられ、全員殺害された事件を発端にしてイスラエルの英雄と呼ばれる父を持つ平凡で《退屈な》男が政府に頼まれて暗殺団のリーダーとなる。 ミュンヘン…

女の思う表と裏(女が階段を上るとき)

mo

成瀬巳喜男、1960年。 タイトルロールから全編、ポランスキーの『水の中のナイフ』かと思うほど甘いジャズが流れ、それに似合った酒場が舞台となり、成瀬といえば高峰秀子が遅れて登場し、「夕方、わたしが階段を上るときが一番嫌だ」と言って現状への不満を…

未亡人のフィールド・ハラー(ブルージャスミン)

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『ミッドナイト・イン・パリ』がレア・セドゥに救われたように『ブルージャスミン』もケイト・ブランシェット、女優に救われている。 女性映画という呼び方は意味がわからないが、女性が主人公の映画。 ウディ・アレンのsexual abuse問題、無知なセレブリテ…

全てが変わるために、何も変えてはならない(ヴァンダの部屋 / 何も変えてはならない)

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ポルトガル、リスボンの外れ、アフリカ移民のゲットー、フォンタイーニャス地区。 三姉妹の次女? ヴァンダは暗い部屋の一室で激しく咳き込んでいる。骨と皮だけの身体が弾み、その弾みで吐瀉物が口から溢れる。アルミホイルの上にタウンページに隠してある…

ヒッチコック『泥棒成金』 / ルノワール『恋多き女』

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《泥棒成金》(1955)時代を感じるタイトル、初のフランスロケ、ヒッチコック自身から《軽い話だからね》と言われてしまうような映画。 お高くとまったミステリ好きの凡庸なお嬢様フランセスをそのままそう見させてしまうグレース・ケリー。これ見よがしに背…

めんどくさいカップルと合図(ザ・フューチャー / ブレヒト《第一のソネット》)

フェミニストオシャレアート文化系女優小説家監督アーティスト… ゆるふわなレッテルに晒されながら頑張っているミランダ・ジュライの第二作。 いくら可愛いミランダ・ジュライでも一般的な忙しい男たちからは「めんどくさい」と言われてしまうであろう女と、…

歌のある過去 と 無表情(四川のうた / 三姉妹)

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絶えず流れに逆らいながら… 《グレート・ギャッツビー》の甘く苦い過去は誰にだって存在する。 四川省成都の国営企業の機密工場《420工場》は郊外へ移転され、解体される。《四川のうた》でインタビューを受ける人々は過去を封印し、現在の生活を成り立たせ…

悪役のメンソール と レクイエム(ハードエイト / Telephone)

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1996年。HARD EIGHT。PTAの処女作。 上から俯瞰されるコーヒーカップと煙草(セイラム)。どうしようもない悪役のサミュエル・ジャクソンがわざわざメンソールは?と聞いていたので、警備員で内か外かをひどく気にしていてさらに金持ちばかり相手にしている…

成瀬巳喜男『流れる』

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1956年、成瀬巳喜男の女の映画《流れる》 金井美恵子によると冒頭と結びで現れる川の流れが意味するものは《行く川の流れは絶えずしてしかも元の水ではなく、流れに浮かぶうたかたが結びかつ消える》という人生の比喩であることは先刻互いに承知の上らしい。…

東京暮色 / 不気味なものの肌に触れる

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1957年。小津の明るい、雲一つない青空、高架上の駅のプラットホームで挨拶を交わす人々はおらず、暗い、灰色の空の下、雪まで降って、高架下のイメージを引き取った人々の暗い話。 原節子でさえ疲れている。二人娘の父たる笠智衆は何度問いかけても話をして…

出産に立ち合わない男は存在しない(アイス / マイルストーンズ)

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立誠小学校の簡素な映画館というか教室で見るには長過ぎるロバート・クレイマーの60ー70年代の二本《アイス》《マイルストーンズ》、左寄りの京都でも観客は少なく、3、4人の男たち、一週間だけの上映でこの数、というのはわかる気もする。 映写機のカ…