2012-01-01から1年間の記事一覧

ウェス・アンダーソン『ライフ・アクアティック』

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もう何度見聞きしたことか、おとぎ話。『謝るのは苦手だから謝らない、だが謝る、すまなかった』偏屈でメタボなうすら禿親父が。何度観ても泣いてしまうのはこんなおとぎ話のなかにあるからこその、死であり、私はそれをどうやって見ればいいのかわからず、…

カスパー・ハウザーの謎 / 獅子座 / ぼくの彼女はどこ?

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仕事を終えてうら寒いリビングでDVD、VHSをデッキに入れて映画を観る。当然眠くなるが眠らなかった映画、ロメールの『獅子座』ヌーヴェルヴァーグ黎明期、若きゴダールが友情出演してベートーベンの弦楽四重奏十五番の一節を何度もループさせる。ぶつ切りは…

ホン・サンス『次の朝は他人』『よく知りもしないくせに』

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もはやお決まりといった二部構成の『よく知りもしないくせに』は長過ぎた。『次の朝は他人』の80分が適当。後者は仕事の疲れがあっても眠くならないだけの緊張感があるが、前者はそうは思えない(笑えるけど)もういい加減、予告編とかチラシに新聞社のく…

ニコラス・レイ『熱い血』/アルドリッチ『カリフォルニア・ドールズ』

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1981年、音楽の権利問題でDVD化することができない『カリフォルニア・ドールズ』のニュープリント版。生まれる前に熱狂を呼んだ本作を三十年遅れで見て、評判通り、泣いたが、他人に勧める気にはならなかった。自分がそのとき見て感動し、泣いたものであ…

孤独 と アメリカ(ヘルツォーク/シュトロツェクの不思議な旅)

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みんないなくなって身よりもなく独りで・・・『ノスフェラトゥ』も観たのだが、こちらの衝撃が強すぎた。個人的に観る時期が嵌りすぎた。ブルーノに説明は必要なく、顔と仕草を見ればはぶられ、隔離され、痛めつけられた男であることがすぐにわかる。リバー…

ブレッソン『白夜』ストローブ=ユイレ『オトン』

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ユーロスペースで。『白夜』。ドストエフスキーとブレッソン、変な組み合わせだと思う。しゃべりすぎる人物はフラッシュバックのおかげで寡黙になり、より自由な変態になった。草原で前転しパパパと口ずさんだり、バスの車内で『マルト、マルト」と呟くテー…

ホン・サンス『気まぐれな唇』『浜辺の女』『アバンチュールはパリで』/ ロメール『緑の光線』

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11月初旬からホン・サンスの特集「恋愛に関する4つの考察」が組まれている。シネマート新宿。代官山ツタヤではヌーヴェルヴァーグ作品といっしょに並べられているフランス寄りのホン・サンスは日本でどう見られるのか。ポン・ジュノ、キム・ギドク、パク・…

ジャ・ジャンクー『長江哀歌』/ 富田克也『サウダーヂ』

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中国、消される街に住まう人々のなか、歪ながらも夫婦という関係を持ち、はなればなれになった2人が再会する。言葉少なく廃墟のなかに佇む男と女それぞれの緩慢な動きと、『煙草/酒/茶/飴』という長い歴史を持つ「物」で物語は進む。登場人物たちの意識…

ラース・フォン・トリアー『メランコリア』

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トリアーがカンヌから追放されるきっかけとなった本作。ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」、モチーフを散見させる静止画、地球とその周りを予測できない軌道で回る惑星。地球にその惑星が衝突してタイトル「メランコリア」第一部はジャスティン。広告会…

『容疑者ホアキン・フェニックス』/Flying Lotus『Until the Quiet Comes』

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ロサンゼルス。LA。いまやニューヨークではない。みなが最後に目指すのはここか?いまはむかしのアメリカンドリームはここに眠るのか?前作「Cosmogramma」で豪華絢爛、けっして安定しないビートに過剰なほどの音が被せられ、ジャズとヒップホップを使った曼…

『ドライブ』/『アウトレイジ』

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今年日本で公開されてどの層からかわからないが絶賛されていた本作、どこが絶賛されているのかは知らず。無口で誠実そうな煙草を吸わない自動車整備士、副業として運び屋、レーサー、スタントもやる男が主人公。隣人の子持ち女アイリーン(夫スタンダードは…

キアロスタミ『ライク・サムワン・イン・ラブ』/ エチカ

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ユーロスペースで。海外の有名映画監督が日本で撮ったといえばヴェンダースの「東京画」、ホウ・シャオシェンの「珈琲時好」などまあ小津リスペクトが強いものが浮かぶ。今回の主役が隠居したじいさんということで、またそれかと思ったが、物語をきちんと練…

クレール・ドゥニ『ネネットとボニ』

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『パリ、18区、夜。』の次、またも傑作、なぜかDVD化されておらずVHSでしかない。1996年、2人のはなればなれになった兄妹が再会し、生活する。思春期、盛りのついた兄ボニと拗ねた目で世界を睥睨し煙草をふかす妹ネネットは感情的だが、決して単純化…

ヴィム・ヴェンダース『ことの次第』

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「ハメット」でコッポラと共作しようとして途中で外れたヴェンダースがそれと平行して撮った作品。SF作品を時代遅れとなった白黒で撮ろうとする監督が主人公の映画内映画作品でその当時から現在にも通じる産業映画(ハリウッド映画)批判が全編にわたって繰…

ゴダール『ゴダールのマリア』/岩窟の聖母

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「右側に気をつけろ」「パッション」「カルメンという名の女」とゴダールのなかでも親しみをもって語られる80年代作品のひとつ「こんにちは マリア」、とにかくミリアム・ルーセルの美と自然美をうつした映像が賞賛される。処女懐胎を枠として何の躊躇もな…

クレール・ドゥニ『パリ、18区、夜。』

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退屈で凡庸な「ショコラ」の監督で認知されているのだろうが、本作そしてヴェンダース、ジャームッシュが絶賛する(彼らの助監督をしていたらしい)「ネネットとボニ」、ギャロ出演の「ガーゴイル」といった作品をもつ。「ショコラ」のあと1994年に製作…

ジョゼフ・ロージー『エヴァの匂い』

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アダムとエヴァの楽園追放。かつてアメリカを追放されたロージーのなかで最も知られた一作。マッチョな男と自由な女。ドゥルーズ「シネマ」より『しばしば、環境に先んじて、環境に反抗して、そして男たちの起源的世界の外部において現れ、在るときはその環…

ジーバーベルク『ルートヴィヒⅡ世のためのレクイエム』

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アテネフランセで。黒沢清が絶賛してるためか、満員。アテネフランセは席取りを誤ると満足に映画が観れない。19世紀中頃から終わりまでバイエルンの国王であり、ワーグナーのパトロンであったルートヴィヒⅡ世の伝記映画。民衆から盲目の信頼を受けつつも藝…

ゴダール『はなればなれに』

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「軽蔑」はカラーだったが、本作と翌年の「アルファビル」は白黒となっている。日本での公開は00年代と遅れた。フランツとアルチュールという文豪の類型である2人の男と純粋無垢なオディールの三人の数日間、まだ物語を語っていた時代に撮られた本作はゴ…

青山真治『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

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2005年。阿部和重、中原昌也/浅野忠信、宮崎あおいというおなじみのチームで撮られた本作。人々を自殺に走らせるウイルスとそれを吸収し消滅させるノイズミュージック、その演奏家2人、過去の女、病人、その養護者2人、包括するレストランのおばさまが主…

ジェームズ・ベニング『Small Road』

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アメリカの実験映画、2011年制作。イメージフォーラムフェスティバル、横浜美術館の最後のプログラム。他にもたくさん見たいものがあったが・・・これだけで。ワンシーンワンショットでアメリカの小道?画面を横断する山脈、四季折々の木々、荒野、工業…

ジェームズ・グレイ『アンダーカヴァー』(We own the night)

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ヌーヴェルヴァーグの登場人物が裏切りや死にも関連づけられることがないのとは正反対に、今日の映画では未だにそこへの執着が見られる。たしかにその限界には様々な葛藤があり、その葛藤は劇的でもある。しかし、やはりクリシェであることは否めない。新た…

ゴダール『気狂いピエロ』

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物語の始めからトリュフォーのようなまっとうな説明や脈絡といったものはなく、退屈そうなフェルディナン(ベルモンド)はすぐに妻を捨てマリアンヌ(アンナ・カリーナ)と逃避行へ。ゴダールの映画に夫婦生活はなく、常軌を逸した、普通でも神経症でもなく…

アラン・J・パクラ『パララックス・ビュー』

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アラン・J・パクラ監督、ウォーレン・ビューティ主演と書いてはみたが、どちらにも大して興味はない。75年。大形式の映画。大統領候補暗殺事件の陰謀を探る新聞記者ジョー・フラディと「パララックス・ビュー」という暗殺集団との戦い。SFのようなタワーの…

北野武『Brother』

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武の映画は夏の映画。ソナチネ、あの夏〜、菊次郎の夏・・・「Brother」はわからない。アメリカのチンピラたちの着込み具合からみて冬かもしれない。日本のヤクザ界を追われてアメリカの弟の元に逃げた兄貴、その舎弟、弟の友達でアメリカでも名を上げるが、…

牧野貴 + ジム・オルーク 「Generator」/ヨハン・ルフ/ベン・ラッセル/Telcosystems

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吉祥寺バウスシアターの爆音映画祭で。他にも「戦艦ポチョムキン+Hairstylistics」など興味深い上映がたくさん。まずは牧野貴の新作「2012 act.3」制作中の作品で、徐々に時間が延びていくものらしい。20分前後で音は牧野貴がライブで演奏。ノイズドロー…

ウディ・アレン「ミッドナイト・イン・パリ」

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アメリカでウディ・アレン史上最高の興行収入を記録した本作。そのタレコミ通り、毒は少なめで美しいパリの映像とノスタルジックなタイムスリップで観客を満足させている。ウェス・アンダーソン作品に欠かせない存在であるオーウェン・ウィルソンが主役のギ…

エドワード・ヤン「カップルズ」

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これからというときに亡くなってしまった素晴らしい映画作家エドワード・ヤンの1996年の作品。若者の群像劇ーー白のTシャツにジーパンという北野武のソナチネを思わせるファッションをした男たち、簡素で美人のフランス女マルト、けばいブルジョワおばさ…

トーマス・デマンド展 @ MOT

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ドイツの現代美術作家の日本では初めての展覧会。社会的な事件を切りとった写真のイメージを元に紙でその空間を再現して写真に撮り、写真を作品とする(紙でつくられたものはすべて処分するらしい)。手の込んだ、つくりこまれた作品。以下、フォトグラファ…

ユスターシュ『ママと娼婦』

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41歳という若さで夭折した最後のヌーヴェルヴァーグ、ゴダールが発見したらしい天才ユスターシュの傑作「ママと娼婦」白黒のアレブレのある映像だが、VHSでも十分に観られる。ジャン=ピエール・レオ主演(アレクサンドル)と囲う女マリー、あばずれでナン…