2012→2013→2016 WATTISMUSICFOR

映画/音楽/文学/美術

マチュー・アマルリック『さすらいの女神たち』

ディーバ… ニュー・バーレスク… マチュー・アマルリック… アメリカン・ガラージ… ルイ・ルイ… 

パリとテレビラジオ電波にトラウマをもつ座長ジョアキム、がに股と釣り上がった目から《カエルさん》と呼ばれる。やりたいようにやっていると痛い目に合う。Uターン禁止なのにすると「最低」と離婚した妻との子ども(兄)に言われる。仲違いしたかつての上司に仕事の相談に行くと「存在しない」と言われ罵られ、ある程度まで手伝ってくれたかつての仕事仲間の男に殴られ、左瞼を切る。つづいて助けを請うた、かつての仕事仲間、入院中の女に喚かれる(子どもが教えてくれる)。

それでもいまやっているバーレスクツアーの見世物のときだけは楽しむ。音楽に合わせて踊り、ひときわ大きな身体で美しいダンスを見せるミミ・ル・ムーの踊りをじっと見つめ、微笑む。が、その最中に子ども兄が脱走し、警察に捕まり、事情聴取される。眠れない夜、ホテルの廊下でミミ・ル・ムーのダンスを一度は褒めておきながら、皮肉を言われるとすぐに前言撤回、口論となり、翌朝、街に連れて行けと言われ、大型スーパーでお買い物。

追い打ちばかりのカエルさんにまたしても打撃。レジ打の中年女がミミ・ル・ムーに「昨日見ました。素晴らしかったです。帰ってうちの旦那に私もやってみせたんです」と言うとミミ・ル・ムーは歓び、カエルさんを呼び、カエルさんも適当にお礼を言っているとレジ女が「わたしの、見てくれません?」と言ってその場でシャツのボタンを外しはじめ、困惑したカエルさんは「やめてください、人が見ています」と至極まともなことを言う。するとレジ女はブチ切れ、バーコード読取の「ピッ」に合わせて口汚く罵り、商品を投げる。とてもおぞましい豹変。レイモンド・カーヴァーの短編にありそうなアメリカ的な豹変、礼讃から罵倒。カエルさんも似たようなことをミミ・ル・ムーにしているのだけれど、そこにはまだ共通の理解らしきものがあってまだ受け入れられる。しかし、このレジおばさんは何の前提もない赤の他人で、好意的に接してきておきながら自分の思い通りにいかないとなるとブチ切れる、それを目の前でやられたときの恐怖、おぞましさはなかなか。さすがにミミ・ル・ムーも優しくなる。

そんな、痛めつけられるカエルさん。ストリップショー、バーレスクの一座の座長、といえばカサヴェテス『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』、紛れもないアメリカ映画であって、今作もストリッパーはすべてアメリカから連れてきた女たち。カエルさんは二回ほど「パリはもう終わった、うんざりだ」というようなことを言う。アメリカに行って『パリ、テキサス』を撮ったヴェンダースの方法は採択せず、あくまでフランスでアメリカの女、音楽を使って撮る。

使われる曲はアメリカのルグラン、ヘンリー・マンシーニジャームッシュストレンジャー・ザン・パラダイス』『ミステリートレイン』でもお馴染みScreamin Jay Howkins《Put a Spell On You》、50ー60年代あたりのガラージThe Sonics《Louie Louie》Nomad というスウェーデンのバンドのヴァージョンも)、《Have Love Will Travel》がふんだんに使われてる。本物のダンサーたちが踊るダンスシーンは本当に素晴らしい。ぶちあがる。ミミ・ル・ムーの羽根踊りはカエルさんといっしょに感動する。ルイ・ルイを踊る男のダンスも楽しい。

帰る場所のないカエルさんは疲れきってラジオ、テレビのノイズどころか、ギター弾きの演奏にも耐えられない。癒してくれたのはラジオを切ってくれたガソリンスタンドの女、ミミ・ル・ムー、ダンサーの女たち。海辺の廃墟ホテルで談笑し、館内連絡のピンポンパンポンにつづいてショータイムを告げる挨拶、そして音楽《Have Love Will Travel》に合わせてマチュー・アマルリックが「wahho!」と叫んで幕。優雅で疲れきっていてそれでも何とかやってみようとして叫ぶ、KOOL

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