2012→2013→2016 WATTISMUSICFOR

映画/音楽/文学/美術

プロミスト・ランド

ガス・ヴァン・サントとマッド・デイモン。

グローバル社という適当につけた感丸出しの社名が表すように、リアリズムではない。基本的に都会人から見た、疲弊する地方という視点、最後もマッド・デイモン演じるスティーブの私怨を晴らし、自らの恋愛を成就させただけのような形、つぶやくように「ものを大切に ものは僕たちのもの」という言葉だけ。都会から田舎へ移住した者たちの肯定。良くも悪くもマッド・デイモンが全面に押し出される。《狂気の沙汰》とか、二日酔いでよたよたと歩いてきて車のドアにバンと手をつくところとか、ダスティンにアリス連れて行かれるときとか、笑いは随所にあった。

自ら家族の地を継ごうと決意して田舎に戻り、教師をやっているアリスは二人の男スティーブとダスティンにたなびく。彼女にとって大事なのは彼らが大企業に勤めているかどうかではなく、イケメンで好青年なのかどうかなのだろうが、彼女も観客と同様にダスティンに一杯食わされる。『永遠の僕たち』で二人が家でアナベルが死んだときのシュミレーションをしているシーンのように、アテナとかいう環境保護団体で活動するダスティンに関するすべてがダミーだったことを知る。マッド・デイモンに知らされて。よほど嬉しかったのだろうが、わざわざ伝えに行く姿は痛々しい。アリスはいつもだいたい微笑んでいて、たなびきすぎ、ダスティンに騙されていたと知ってもデフォルトの微笑み、都合よく使われすぎている。しかしながら、都会から地方へとんぼ返りしたアリスはこの映画には必要で、その存在、スティーブの敗北がなければ、大企業のやり手のサラリーマンが環境保護を理由に謀反を起こしたりはしない。お固いテーマにもロマンスは必須なのがハリウッド…

ダスティンがその後の二人に影を落とすことはないか。最後にアリスの家を訪れたとき、アリスは二度目か三度目かのときと同じ服を着ていたのが、なんかちょっと残念だった。来るってわかってるんだったら違う服着ないか。イヤでも顔を合わせる小さな街では、おしゃれなんて無意味か。そんなことはない。

田舎の男たちも単純で、嫌なこと言われるとすぐに殴るし、ブルース・スプリングティーンで盛り上がるし、地方の描写はかなりの紋切り型。地方は動きがそもそも少なく、閉鎖的で外との交流も少ないため、紋切り型があてはまりやすく、独自の文化や伝統といったものはどんどんと廃れてきており、国道沿いにはチェーン店、あとはシャッター商店街というありふれたどこにでもあるような光景に変化している。そこから逃れるものは『サウダージ

とはいえ、何兆円もの資金をもつ大企業の鏡、ダスティン。冒頭、なぜお前のチームだけ成績がいいんだ?と聞かれてスティーブが誇らしげに言う「オハイオ出身ですから」という言葉さえもダスティンが打ち砕く。まぁダスティンも地方出身なのかもしれないが、ネブラスカ出身で農場を持っていてグローバル社にめちゃくちゃにされたんだという嘘で地元住民の心をたやすく掴んでしまい、《地方出身》なんて何のアドバンテージにもならず、口先からうまい嘘さえつけて、好青年アピールができていれば問題はない、ということが証明される。

それでも最後にはダスティンもボロを出してしまうところはかなり強引。ダスティンは社から最後まで身を隠すことを求められていたのだが、スティーブの挑発に乗ってしまい、知っているはずのないルイジアナの訴訟のことを口に出し、あーもう仕方ないなと全部をネタバレする。これのせいで、スティーブがダスティンの嘘をばらし、たぶんシェールガスの発掘は中止されるだろうからダスティンも相当の処分を受けることになり、これまでの努力は水の泡。

これでもグローバル社の計画が実行されたらそっちのほうがリアリティがあるように思えるのだが… 車買っちゃった奴も、億万長者を夢見ていたお父さんもお母さんもかわいそうに… 

そこを押し切るマッド・デイモン。

 

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