クロード・シャブロル『刑事ベラミー』 フランス映画未公開傑作選より

本日イメージフォーラムで封切りされたフランス映画未公開傑作選。クロード・ミレールが4月に亡くなってしまったので、そういう特集ともとれる。しかし、この御三方の映画はどんなものであっても傑作と呼ばれてしまうぐらいのものである。

初日に行ってみたが、ほぼ満員だった。サニエ嬢とセシルドゥフランス嬢のポストカード目当てなのか。老人が多かったが。
地方では考えられない入りで、東京の文化に対する興味の高さを思い知った。この差はなんなのか。

シャブロルの遺作『刑事ベラミー』。昨年日本で公開された『悪の華』や『甘い罠』のようなシリアスさは少なく、『最後の賭け』のような軽さが目立つ。話としてはただの浮気、兄弟喧嘩、夫婦関係といったもので目新しさはないが、兄弟間の理解し難い感情の高ぶりや浮気した男の動き、浮気相手の女の動きなどそこかしこにある関係が偶然によって組み合わされ、変化していく様がサスペンス感を交えて展開していく。

『最後の賭け』のミシェル・セローのように本作のジェラール・ドパルデューが知性的ながら茶目っ気のあるおじさんを好演していて微笑ましい。シャブロルと同じくらいの年だからか、存在感が最もある。まずはドパルデューの鼻に驚き、息切れで笑い、ビンタで恐れおののく。シャブロル特有のスピード感をもった流れるカメラワークはどれだけ俳優が太っていても停滞しない。

愛も理解もある妻、どうしようもない弟、情熱的で向こう見ずな依頼人、不幸が目に見えてわかるその妻、若く意地悪そうな浮気相手、浮浪者、その元恋人・・・自分の妻から張り手をくらってすぐに謝るところあたりが何よりもベラミーの性格を伝えている。そこで誰もがベラミーを尊敬し、話をしてくれる理由を理解する。カサヴェテスのように人間を中心に据え、なおかつ紋切り型を避けて関係性をつくりあげている。ホームセンターの女からの裁判や浮気相手の妻の死などはご都合主義が垣間見えるが、この軽さは本作全体に纏わりついている。歌ですべてを説明してしまうあたりは黙って口をあけて聴き入るしかない。


映画の國名作選 V フランス映画未公開傑作選


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