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出産に立ち合わない男は存在しない(アイス / マイルストーンズ)

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立誠小学校の簡素な映画館というか教室で見るには長過ぎるロバート・クレイマーの60ー70年代の二本《アイス》《マイルストーンズ》、左寄りの京都でも観客は少なく、3、4人の男たち、一週間だけの上映でこの数、というのはわかる気もする。 映写機のカ…

征服者は常に敗北者によって征服される(アクト・オブ・キリング)

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そら吐きたくもなるわな… 1965年、インドネシア、共産主義者と華僑の100万人以上が虐殺された歴史の端っこにいるヤンキーたち…こんな奴らの行ないから人間の尊厳だの悪とは何かと言われても… 主人公が設定されるドラマチックなドキュメンタリー、今作…

ポール・トーマス・アンダーソン『マグノリア』

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アルトマンから継いだ群像。微妙につながっている。群像劇は要素の繋がり、伏線、その回収が次々に継起して進んでいき、その中心に作家が見えるためフィクション、特にエンタメの形式であり、今作も中盤で登場人物各々に同じポップスを歌わせてフィクション…

悪の法則 / 銀河 / 暗殺の森 / 忘れられた人々

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男だ、女だとうだうだと言っている男たち。女たちは出てこず。 キャメロン・ディアス(マルキナ)とペネロペ・クルス(ローラ)、女豹と平凡な美人セレブ妻はプールサイドで話し合い、ダイヤモンドの価値について意見を交わす。キャメロンは資本主義的価値を…

ルイ・マル『死刑台のエレベーター』

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鉛筆削りじゃやっぱりダメだった。知らない誰かが無鉄砲に撃った銃にご破算にされる。 エレベーターは上昇していたはずなのに電源が復活して物語の下降線とともに落下する。 男ジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)、元落下傘兵はもはや落下するときも…

ブギー・ナイツ / パーティー・ガール(暗黒街の女)

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青春ー栄光ー没落 レイジング・ブル 青春時代の細切れの栄光の日々は欲しいものを買ってパーティーを開いてホワイトラインを鼻の中に入れていくお決まりのものだが、終盤に向けての材料が散りばめてある。ホフマン先生の使い方が酷い。監督のキャラが薄い。…

熊切和嘉『夏の終り』

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満島ひかりの細く長い指。特に長い。 かつて繋がれた手とまどろみのなか繋がれた手と解かれた手。 男は成瀬と同じくどうでもいい存在であり、それは俳優2人によってよく抑制されている。 かといって女が素晴らしいとか母性押し出しでもなく、女から見てもこ…

稲妻 / 乱れる / めし / 世界

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「キンタマのない」映画とはまたよく言いますね。 失恋してというか、女に出会って仲良くなって話していると意味がわからないところで怒りだし、意味がわからないところで優しくなり、サド=マゾを連想してしまうようなアメとムチっぷりを見せられ、困惑した…

パラダイス:愛 / パラダイス:神

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人のいいデブだっている。デブへの風当たりは夏の満員電車において激しさを増すが、悪気があって太っているわけではないし、身体のことをとやかく言うのは礼を失している。しかしながらほとんどの人が礼を失して人の身体について言葉を並べる。胸がでかい、…

女っ気なし / パラダイス:希望

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『女っ気なし』ではタイトルがタイトルだけに女っ気なしの優男に女がやってくる話で、実直で物知らずで優しくろくでなしのいくらでも形容詞がつけられそうな男が中心にいる。浜辺でちょこちょこ飛び跳ねながらこちらへ向ってくる男は「かわいい」のかもしれ…

穴 / 愛、アムール / 凶悪 / 地獄でなぜ悪い

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ガスパールは決して許されない。独善的で凡庸な、何の歓びもない裏切り。 ピエール瀧もリリー・フランキーも許されない。何をしたところで。誰にも。許しを請うことが許されない。また、誰も彼らを裁くことはできない。『凶悪』犯の足跡を追う記者は正義感に…

ハーモニー・コリン『スプリング・ブレイカーズ』 / テオ・アンゲロプロス『エレニの帰郷』

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スプリング・ブレイク…フォーエバー ヤク中、ガンマニアのヤンキーの朦朧とした頭で呟くフレーズは、女学生たちの登場によって生まれ、繰り返される。ブリトニーの切な系ポップソングをピアノ弾き語り合唱し、隙だらけの強奪を繰り返す。 女の子たちのキャラ…

キム・ギドク『嘆きのピエタ』

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未だに引きずられる資本主義。 鶏、鰻、兎。動物たちが登場し、殺される。金を中心に、そこに愛を絡め、恐怖、憎悪、不安、歓びといった感情を挿入する。 鰻がのろのろと階段を下りていくさまは足を引きずる男へ。逃げた兎が車に轢かれ、鶏と鰻がナイフで裂…

デヴィッド・O・ラッセル『アメリカン・ハッスル』

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誰かのことを好きになってそれが本物かどうか知りたかったら相手の好きな音楽を知ればいい。それで真偽がわかる。音楽を聴かない奴はやめといたほうが身のため。 リアルと嘘、真実と偽物、相変わらずの二項対立だが、フィクションに現実から圧力がかけ始めら…

明日に向かって撃て! / さすらいの二人 / ニューヨーク、恋人たちの二日間

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偽の軽さ と 疲れ切った男 と 魂。 写真で振り返る出来事の多いこと… 写真で始まり写真で終わる、写真に挟まれた回想の物語。三人でコニー・アイランドへ。ルーリードの『Coney Island Baby』… 人を殺したことがない盗賊団のボスと泳げない早撃ちのガンマン…

グラウベル・ローシャ『狂乱の大地』『アントニオ・ダス・モルテス』

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かつて作られた映画の中で、最も偉大な「騒乱」の映画がある。騒乱はもはや意識化から生起するのではなく、すべてを、民衆とその支配者たち、そしてカメラそのものを失神状態にし、すべてを逸脱させ、様々な暴力を交通させると同時に、私的な事柄を政治的な…

ビフォア・ミッドナイト / 浮雲

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腐れ縁 と 腐れ縁。 中年をむかえたイーサン・ホークとジュリー・デルピー。ロマンを語った小説家はいまだ妄想をしつづけ、環境保護活動家は家事との両立を計る。延々とつづく議論と会話。元妻との間にできた息子への親馬鹿、元妻批判、過去の火種、家事と仕…

哀しみのトリスターナ / ウォールデン

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失われた脚 と ホーム・ムービー。 ブニュエル、カトリーヌ・ドヌーヴ。古典。トリスターナのピアノのペダルを踏む失われた右脚とミア・ワシコウスカの連弾によって震える脚(こればっかり) 病による変貌。化粧がいくらか濃くなり、背筋が伸び、口調がきつ…

女と男のいる舗道 / オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ

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悲劇 と カップル。 ゴダールの文学青年時代。ブリス・パランの素晴らしい講義と、アンナ・カリーナの可愛らしいダンスと憂い顔と涙と、男たちの身勝手さによる悲劇の幕切れにおける死で、物語としての悲劇にお別れを告げるゴダール。 次の『はなればなれに…

教授とわたし、そして映画 / 引き裂かれた女 / かぐや姫の物語

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大人であるらしい男 と フーガ と 絵。男たちは子どもの身振りを持ったまま、だんだんと深化していく。女たちはいまだ謎のまま。追い求める男女、別れに際して化け物に変わる女、ストーカーまがいの男、感傷的でどうしようもない男、強い女。だらしないが、…

ムード・インディゴ  うたかたの日々/ 時計じかけのオレンジ / 桐島、部活やめるってよ

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完璧に近い物語 と 恋愛よさようなら と ソフィア・コッポラの不変性。ライティ・ライト。崩れた、楽しい言葉をつかって外国人として反抗するアレックス。キッチュな風景に取り囲まれ、イエーース?と自分の答えを押しつける教師とボロ人形同然の両親からま…

女たち / 3人のアンヌ / 楽園への道 / ラブ・ストリームス

問題はただ単に人間の避け難い性向である、ということを考えまいとしていま控え目に言われるとおり、全体主義はただ洗練によってしか打ち破られないだろう…体系的で、野性的な洗練…善意によってではない…とんでもない!声明を出して自分を広めたりしないこと…

熱波/風立ちぬ/SARU

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メロドラマ と おとぎ話。ポルトガルーブラジルーアフリカー日本。湿潤温帯から亜熱帯へと移行した日本でセンチメンタル=メロドラマを見て涼しい気分になった。暑苦しいはずの鬱蒼とした木々には風がさほど当たらず、虫の音のリフレインは鰐の生け簀に落ち…

『ムーンライズ・キングダム』『フォーエヴァー・モーツァルト』『ホーリー・モーターズ』『ザ・マスター』

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子どもと大人のためのおとぎ話 と 運動の終焉 と 男の抱擁。ゆるく、小気味よく、たんたんと、たまに感情的に言うべきことを言う登場人物たちとともに、やはりおとぎの国のおとぎ話を物語る。これは映画だから、と言って切り捨ててしまうのはもったいないと…

ウェス・アンダーソン『ライフ・アクアティック』

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もう何度見聞きしたことか、おとぎ話。『謝るのは苦手だから謝らない、だが謝る、すまなかった』偏屈でメタボなうすら禿親父が。何度観ても泣いてしまうのはこんなおとぎ話のなかにあるからこその、死であり、私はそれをどうやって見ればいいのかわからず、…

カスパー・ハウザーの謎 / 獅子座 / ぼくの彼女はどこ?

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仕事を終えてうら寒いリビングでDVD、VHSをデッキに入れて映画を観る。当然眠くなるが眠らなかった映画、ロメールの『獅子座』ヌーヴェルヴァーグ黎明期、若きゴダールが友情出演してベートーベンの弦楽四重奏十五番の一節を何度もループさせる。ぶつ切りは…

ホン・サンス『次の朝は他人』『よく知りもしないくせに』

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もはやお決まりといった二部構成の『よく知りもしないくせに』は長過ぎた。『次の朝は他人』の80分が適当。後者は仕事の疲れがあっても眠くならないだけの緊張感があるが、前者はそうは思えない(笑えるけど)もういい加減、予告編とかチラシに新聞社のく…

ニコラス・レイ『熱い血』/アルドリッチ『カリフォルニア・ドールズ』

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1981年、音楽の権利問題でDVD化することができない『カリフォルニア・ドールズ』のニュープリント版。生まれる前に熱狂を呼んだ本作を三十年遅れで見て、評判通り、泣いたが、他人に勧める気にはならなかった。自分がそのとき見て感動し、泣いたものであ…

孤独 と アメリカ(ヘルツォーク/シュトロツェクの不思議な旅)

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みんないなくなって身よりもなく独りで・・・『ノスフェラトゥ』も観たのだが、こちらの衝撃が強すぎた。個人的に観る時期が嵌りすぎた。ブルーノに説明は必要なく、顔と仕草を見ればはぶられ、隔離され、痛めつけられた男であることがすぐにわかる。リバー…

ブレッソン『白夜』ストローブ=ユイレ『オトン』

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ユーロスペースで。『白夜』。ドストエフスキーとブレッソン、変な組み合わせだと思う。しゃべりすぎる人物はフラッシュバックのおかげで寡黙になり、より自由な変態になった。草原で前転しパパパと口ずさんだり、バスの車内で『マルト、マルト」と呟くテー…